「来年、新造船を就航させようと計画しているんです。」
連絡をくださったのは、先日、調査目的で訪問し、お世話になった、ある村役場の方でした。
「この前、島に来てもらった時に短い間だったが、能力や人柄などもトータルで気に入ったので、あらためて話をしたい。」
後日、その方の出張に合わせて東京で再会を果たしました。
「来年、新造船を就航させようと計画が進んでいるんだけど、いろいろな面で手伝ってもらえないか。村長も同じ考えだから。」
お断りする理由は何もありません。
「はい。よろこんでやらせていただきます。」
村長同席の打ち合わせで
わたしたちができることと
今回のプロジェクトでまずやらなければならないことを伝えました。
「船体のデザインやネーミング、広報戦略、集客イベント、これらを検討していく上で、
新しい船の『コンセプト』を明確にしなければなりません。
わたしたちにとって、この島にとって「船」とは、何なのかあらためて考えることから始めましょう。」
村民全員で350名ほどの小さなコミュニティです。
小さなコミュニティのメリットである
リーダーシップとフットワークの良さが発揮されます。
すぐに準備委員会が設立され
わたしたちのアドバイスのもとにコンセプト・メイキングがスタートしました。
ミーティングの議事録を作成していただくときに必ずお願いしていることのひとつに
ボイスレコーダーを使うなどして、極力、発言されたことばをそのまま記録してくださいというものがあります。
まとめたり、簡略化しないで欲しいと。
その“生の声”にどれほどの宝が埋もれているのかということをわたしたちは知っているからです。
そして、まとめたり、簡略化するのはわたしたちの役割ですから仕事を取り上げないでくださいと(笑)
そんなやりとりからわたしたちが最終的なアウトプットをします。
「なぜ、あれだけの情報で、こんなところまでわかるんですか。」
ありがたい感想をいただくことも少なくありません。
コンセプト・メイキング完了です。
「つながり」
ひらがなで「つながり」です。
これからは、行き詰ったり、迷ったりしたらここに戻ってくれば良いのです。
新しい船の名前を公募にすることにしました。
もちろんネーミング募集の告知では「つながり」というコンセプトを伝えました。
その結果
島の内外からご応募をいただき、その数は、北は北海道から南は鹿児島まで15の都道府県から250点を超えました。
また、応募いただいた方々の年齢は1歳から90歳までと幅広いものとなりました。
わたしたちがご応募いただいた作品を分類します。
<大分類>
○コンセプトに沿ったもの
○島に関するもの
○その他
<中分類>
○地名、動植物名など
○地産品や名物など
などなど
その後のネーミング選定会議の開催・進行方法などについてもアドバイスをさせていただき、コンセプトに沿った素敵な名前が決定しました。
続いて
船体デザインの検討に入ります。
造船会社のデザイン部門にもコンセプトと新しい名前を伝えます。
わたしたちは、船舶デザインのプロフェッショナルではありませんので、最初は、なるべくシンプルなカタチでイメージを伝えます。
ざっくりし過ぎているくらいがちょうどイイと思っています。
イメージが先きに行き過ぎると、たいせつなクリエイティブな部分をがんじがらめにしてしまうことを知っているからです。
程なくしてデザイン案が届きます。
専門家の方のアウトプットですから、どれもが見ごたえあるものでした。
しかし
「何かが足りないなぁ。」という印象です。
島の多くの方にも見ていただきましたが、みなさん一様に同じ意見でした。
時間にも限りがあります。
わたしたちがこの「何か足りない。」の「何か」をもう一歩具体的にデザイナーさんに伝えることにしました。
この部分は、ノウハウを含みますので割愛させていただきますが
次に届いたデザイン案を見て
わたしたちの伝え方が間違っていなかったことを確信しました。
同時に、わたしたちの伝えたかったことをカタチにしてくださったデザイナーさんに感謝です。
島の方々もこのデザインを見て大変満足してくださいました。
ちなみにデザインにある「☆」の数は、当時、島に住むこどもたちの人数と同じにしました。
すべてのことには理由があるのです。
この新造船に乗ってくれるたくさんのこどもたちもきっとよろこんでくれることでしょう。
ディティールの修正をお願いし、デザイン決定です。
村長の発案で、船体に入る船名を県知事さんに筆文字で書き上げていただき、それをベースにデザイン化もしました。すばらしいアイディアだと思います。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが
フェリーなどの客船には煙突があります。
煙突にその船の運営会社や航路を表すマークが表記されています。
これを「ファンネルマーク」と呼びます。
今回の船体は、双胴船(カタマラン)で、高速船です。
フェリーと違って、船の目印の一つでもある煙突がありません。
少しよくばりだったかも知れませんが
最後の仕上げに、ファンネルマークをデザインし、つけることを提案しました。
「どこに?煙突ないじゃん。」
「遊歩甲板椅子席(デッキ席)を覆っている屋根の上に表記しましょう。」
提案は、採用となりました。
「Small island of great excitement」(小さな島の大きな感動)というたいせつにしたいキーワードをレインボーカラーでデザインに入れました。
普段は目立たないかも知れませんが、空撮などで確認ができます。
同時進行で、客室内のイスなどのカラーリングもアドバイスをさせていただきました。
あとは、新しい船の完成を待つばかりです。
さて、いよいよ初対面のときがやってきました。
スピードを落とし、ゆっくりと入り江から新しい船がその姿をあらわしました。
鳥肌ものの感動です。
思わず、口をついた言葉は
「すっごく、かっこいいな。」でした。
デザインには、正解が無いのかもしれません。
しかし、『コンセプト』が明確になっていれば、携わったみなさんに納得していただける到達点にたどり着けるのです。
この他にも
・ホームページリニューアルのディレクション
・イベントなど集客案の企画
・広報戦略の立案
・地産品の商品化(ブランディング)検討と販売ルートの確立
・イメージキャラクター(ゆるキャラなど)のコンセプトメイキングとブランディング
・航路運営会社の経営改善など
包括的にお手伝いをさせていただいております。
「やらなきゃいけないこと。」のしぼりこみからはじめてみませんか。
いまはじめようとしていることの費用対効果は?優先順位は間違いないでしょうか?
ご予算をお聞かせください。